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土壌物理学会大会:第55回 2013年10月26日(土)
発表
順番
発表者 所属機関 発表タイトル(和/英) 発表要旨 PDF要旨
1 溝口勝 東京大学大学院農学生命科学研究科 農水省は被災地各地で表土剥ぎ取り法による除染事業を展開している。しかし、汚染土壌の行き場は決まっていない。筆者は、一刻も早い帰村と農業再生のためには農民が自ら実施可能な除染方法を提示することが急務であると考え、NPO法人と協働で、粘土とセシウムの性質を活かした除染技術の開発に取り組んでいる。本シンポジウムでは、これらの農地除染の現場実験を紹介しながら、それらの実験を通じて思いついた土壌物理学研究のヒントについて述べる。 ダウンロード
2 谷山一郎 (独)農業環境技術研究所 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故によって多量の放射性物質が環境中に放出され、福島県を中心として日本の広範囲の土壌や農作物が放射性物質に汚染された。その後、農地土壌中の放射性セシウム濃度は物理的減衰と同程度減少し、農作物においてもさまざまな対策がとられた結果、基準値を超える件数は大幅に低下している。今後は、作付制限が行われている地域での農業再開に向けた慎重な対応が求められる。 ダウンロード
3 山口紀子 農環研 一度土壌に吸着した放射性Csが土壌溶液に再分配される割合は非常にわずかである。このことが農作物による放射性セシウムの経根吸収量を最小限に抑えている一方で、空間線量を下げることを目的とした土壌の除染を難しいものにする一因ともなっている。沈着した放射性セシウムの大部分が土壌にとどまるメカニズム、および土壌の放射性セシウム固定能評価法を解説する。 ダウンロード
4 若杉晃介、原口暢朗 (独)農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所 原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質は未耕耘の場合、農地土壌のごく表層に留まる。そのため、汚染土壌表層2~3cmの剥ぎ取りは迅速かつ効果的な除染方法である。本研究では土壌固化剤を散布し、汚染土壌表層のみを剥ぎ取る油圧ショベルの操作方法によって確実かつ効果的に除染する工法を開発した。さらに、土壌凍結によって表土剥ぎ取りによる除染作業が見送られている冬期においても施工可能な工法を開発した。 ダウンロード
5 若杉晃介、原口暢朗 (独)農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所 原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質は未耕耘の場合、農地土壌のごく表層に留まる。そのため、汚染土壌表層2~3cmの剥ぎ取りは迅速かつ効果的な除染方法である。本研究では土壌固化剤を散布し、汚染土壌表層のみを剥ぎ取る油圧ショベルの操作方法によって確実かつ効果的に除染する工法を開発した。さらに、土壌凍結によって表土剥ぎ取りによる除染作業が見送られている冬期においても施工可能な工法を開発した。 ダウンロード
6 小林政広 森林総合研究所 東京電力福島第一原発事故により放出され森林に沈着した放射性セシウム(Cs)は、初期には大部分が樹冠またはリター層に分布していたが、時間の経過とともに移行し、鉱質土壌に存在する割合が増加した。林内雨およびリター層通過水では、放射性Cs濃度が夏季に上昇し、懸濁態の寄与が大きくなった。森林から流出する渓流水中では、降雨により増水して懸濁物質が増えると放射性Cs濃度が上昇した。 ダウンロード
7 西村 拓 東京大学 Csは土-水系内では固相へ分配され易く、Freundlich型もしくはLangmuir型の交換等温線でその特性が表現できる。これに基づくと土中の放射性Cs移動は小さいはずであるが、実際にはかなりの移動が生じることがある。これが有機コロイドによる移動促進であるという作業仮説を立て、カラム実験を行った。 ダウンロード
8 成岡 市、廣住 豊一、古谷 啓 三重大学大学院生物資源学研究科 干拓地水田の管状孔隙構造、層位間の接続性・通気性・排水性等について、現地調査・室内実験から考察した。とくに耕盤層の管状斑鉄は、孔隙辺縁部(斑鉄部分)の密度が大きく、孔隙径の大小に関係なく孔隙の辺縁から200~300μm基質側に密度のピークがあった。この"Liesegang band"は、土壌の酸化還元、水稲根の酸化力等に関する既往の知見のほか、通気性の高い層位間の粗孔隙構造と地下汽水位の上下動の結果によるものと考察した。 ダウンロード
9 落合 博之、登尾 浩助、松本 良 北里大学  近年,新エネルギーの開発が求められている.その中の一つのメタンハイドレートが,固体状の天然ガス資源として注目を浴び始めている.深海底にはフリーガスとしてメタンガスが存在することが分かり始め,その測定方法が求められている.落合らは,海底堆積物中の水分量測定に成功したが,汎用性が低く,費用がかかった.そこで本研究ではより汎用性が高く,それまでより安価で測定することを念頭に置いて研究した. ダウンロード
10 本荘雄太、辻本陽子、小林幹佳、足立泰久 筑波大学生命環境科学研究科 飽和豊浦砂の流動電位と電気伝導度の測定により,豊浦砂の荷電特性を調べた.電気伝導度を解析した結果,O’Brienらの理論式がよく成り立つこと,表面伝導の影響が無視できることが明らかとなった.流動電位から算出したゼータ電位のpH依存性は,主成分であるシリカと定性的に一致した.しかし,ゼータ電位の実験値と,Hiemstraらが報告した1pK Sternモデルによるシリカの拡散層電位の計算値とは定量的に異なることが明らかになった. ダウンロード
11 辻本 陽子、Claire Chassagne、足立 泰久 筑波大学大学院生命環境科学研究科 誘電スペクトロスコピーにより無塩系粘土懸濁液の誘電特性を明らかにし、電気二重層の発達やそれに伴う粒子間相互作用の影響を調べた。スターン層導電率およびゼータ電位をパラメーターとして、Chassagneらの理論に基づき解析をした結果、緩和周波数がバルクの導電率に相当するイオン強度によって決まるデバイ長と相関があることが明らかとなった。また、誘電率と体積分率の関係から、モンモリロナイト粒子間に相互作用が働いていることが示唆された。 ダウンロード
12 山田健太、小林幹佳、藤巻晴行 筑波大学大学院 生命環境科学研究科 本研究では、小型人工降雨装置を作成し、降水のpH、電解質の種類が土壌表面からの流出水の発生に及ぼす影響について検討した。実験から、表面流出の発生は酸性で抑制され、アルカリ性で促進されることが明らかとなった。これは土粒子のζ電位の大きさに対応していた。また、土粒子間の静電的反発力のない急速凝集領域にある1M NaCl、1mM CaCl2の降水実験の結果、Ca降水の方が表面流出発生の抑制効果があった。 ダウンロード
13 渡辺晋生 三重大学大学院生物資源学研究科 砂試料両側端の水位を等しくした水の流れのない条件と、一定の水位差を設けた水の流れのある条件で、試料に鉛直に挿入した冷却管に–20℃の冷媒を循環した。この際、凍土の発達と地下水位の変化を壁面より観察した。流れのない条件では冷媒循環後90 分で凍土が不透水性の壁状の層をなしたが、流れのある条件では凍土の成長により流れが遮られるまで330 分を要した。熱の移流や流れによる間隙氷の形や分布の変化が、凍土の成長と透水性の低下を遅くしたと考えられる。 ダウンロード
14 竹内萌実、渡辺晋生 三重大学大学院生物資源学研究科 室内実験により湛水土壌の表面近傍のEhとDOの空間分布を調べた。給水開始後48 hは、DOに測定箇所による違いはみられなかったが、Ehは給水点からの距離で異なった。48 h以後は、給水点からの距離が異なっても、EhやDOの深さ分布は等しくなった。室内実験では乾燥密度や基質の添加を均等に行い、給水点を考慮すれば、48 h以後ではEhの空間分布を無視できるといえる。 ダウンロード
15 三木真隆、取出伸夫 三重大学 植物遺体の分解実験(広瀬 1973)に対して窒素・炭素循環モデルを適用し,一次分解定数や腐植の生成割合を決定し,有機物分解過程の窒素と炭素の形態を検討した.C/N比が大きい植物遺体ほど,分解定数が小さい.C/N比が20以上の植物遺体では,分解初期において土から無機化された無機態窒素の有機化が生じた.さらに分解が進行すると,CO2の発生によりC/N比は20以下に低下し,窒素の無機化が生じる有機物分解過程へと変化し,最終的にNH4と腐植に分解された. ダウンロード
16 長田友里恵、渡辺晋生 三重大学大学院生物資源学研究科 黒ボク土を異なる速度で凍結・融解し、不凍水量曲線を比較した。凍結速度が速いと、温度平衡時に比べ不凍水量が多くなった。また、動的に温度を変化させながら不凍水量曲線を作成すると、凍結曲線と融解曲線に氷の非平衡成長による見かけ上のヒステリシスが生じた。水分特性曲線や蒸発過程の水分量変化は不凍水量曲線と概ね一致したが、今後の詳細な検討が必要である。 ダウンロード
17 二川雅登、村田光明、石田誠、澤田和明 豊橋技術科学大学 土壌中のオンサイトモニタリングを目指し、EC、温度、pHセンサを集積化したマルチモーダルセンサを製作した。5 mm角のSiチップ上に半導体集積回路技術を用いて形成しており、各センサが同時・リアルタイムに計測できることが特徴となっている。このセンサを用い、ロックウールでのEC、温度、pHリアルタイム計測と、土壌でのEC、温度の長期計測を行い、センサの有効性を確認することができた。 ダウンロード
18 村田光明、二川雅登、熊崎忠、三枝 正彦、澤田和明 豊橋技術科学大学電子情報工学専攻 土壌の養分拡散は作物の養分吸収を知るためにとても重要である.拡散の大きさを示す指標として拡散係数がある.拡散係数の算出は2 cm 以下の養分分布変化を測定する必要がある.しかし,土壌を採取する方法が主流のため,非破壊,連続測定が困難である.本研究では,mmスケールの電気伝導度(EC)センサを複数利用したECセンサアレイシステム(ECSAS)を作製した.ECSASを用いて土壌溶液EC分布を連続測定した結果と,フィックの法則から算出したEC分布を比較し,2種類の土壌の拡散係数を求めた. ダウンロード
19 坂井 勝、Scott B. Jones 三重大学大学院生物資源学研究科 鳥取砂丘砂と黒ボク土に5線式熱パルスセンサーを適用し、飽和定常流・不飽和重力流実験中の水分フラックスの推定を行なった。飽和流については精度よく推定でき、地下水流速測定への適用が期待される。不飽和流については、水分減少時に生じる気相・液相のバラつきが原因と考えられるズレが見られた ダウンロード
20 臼井靖浩、福岡峰彦、吉本真由美、常田岳志、酒井英光、長谷川利拡 独立行政法人 農業環境技術研究所 水地温上昇処理が水地温の変動と水稲の乾物生産に与える影響を圃場条件で長期的に確かめるとともに、品種や他の環境要因との相互作用を検討した。水地温上昇処理により水稲の乾物重は有意に増加(p<0.05)した。温度条件の変化(水地温上昇処理)が作物の生育に影響を及ぼすことが圃場条件での実験によって明らかになった。また年次の水地温変動と気温変動についても検討した。 ダウンロード
21 名倉理紗、佐藤直人、南隼人、片野健太郎、登尾浩助 明治大学大学院農学研究科 微小重力下で作物を育てる宇宙農業は、長期間・多人数の宇宙開発ミッションを行うために重要である。宇宙空間で土耕栽培を行うには、微小重力下における土壌粒子間隙中の水分移動のメカニズムを明らかにすることが必要である。そこで、本研究ではガラス製丸底フラスコを用いて土壌粒子モデルを作成し、モデル間隙中の水分移動を可視化し画像解析した。水分は丸底フラスコ接触点に液架橋のような形状で保持され、移動することはなかった。 ダウンロード
22 下大園 直人、南 隼人、島野 光隆、登尾 浩助 明治大学大学院農学研究科 水田において異なる水管理が、土壌溶液中のNH4+・NO3-濃度とSPAD値に及ぼす影響を調査した。その結果、調査期間中における土壌溶液中NH4+は、湛水区では移植後45日目まで、間断灌漑区では17日目まで存在することがわかった。また、土壌溶液中NO3-は、湛水区では移植後10日目まで、間断灌漑区では34日目まで存在することがわかった。栽培したIR24のSPAD値は、移植後32日目以降、湛水区が間断灌漑を行った2つの区画に比べ高い値で推移した。 ダウンロード
23 山崎琢平、井本博美、西村拓 東京大学大学院農学生命科学研究科 負圧浸入計を用いた測定は通常不飽和状態にある土壌において非湛水条件下の透水性を評価する手法として検討が続けられている.本研究では,計測の省力化を目的に可変抵抗式水位計と圧力変換器を用いた自動計測型負圧浸入計の開発を試みた.計測精度は概ね良好で,可変抵抗式水位計の有効性が確認された.自動計測化に関する部分が5.4万円の比較的安価な装置を開発できた. ダウンロード
24 岩田幸良、広田知良、矢崎友嗣、岩崎暁生、鈴木剛 農業・食品総合技術研究機構 気候変動により、北海道の大規模畑作体系においてもっとも厄介な雑草の一つとなった野良イモについて、北海道十勝地域の4地区で2年間観測した野良イモの生存率と各圃場の飽和透水係数との関係を調べた。冬の低温により凍結死した圃場や表層の透水性以外の要因で排水不良の圃場を除くと、両者の間に有意な関係が認められた。インキュベーション試験の結果から、過湿による野良イモの死滅は、融雪期より後の暖候期の多雨後に生じたことが示唆された。 ダウンロード
25 加藤千尋、林祐誠、西村拓 東京大学大学院 土壌データベースを利用した農地土壌水分の広域予測を想定し,富山市吉岡(Sandy Loam),福井市下中(Clay Loam)の二種類の土壌について,水分移動特性の推定法を検討した.単純な作物根系を仮定すると,土壌水分予測精度が増すこと,不飽和透水係数を特徴付けるパラメータ(間隙結合係数l)の,土壌水分量予測値に対する感度が低くなることが示唆された. ダウンロード
26 平嶋雄太、上村将彰、宮本英揮 佐賀大学農学部 TDTセンサーによる高精度の電気伝導度(EC)計測を実現するために,濃度の異なるNaCl溶液と混合した水分飽和砂のTDT波形を取得・解析し,その測定値を4極センサーのそれと比較した。波形の勾配は,NaCl溶液の電気伝導度(σw)の増加とともに緩やかになり,波形の立ち上がり点の時間はσwによらず概ね同一値を示した。波形最大勾配値(SMax)が580 mV ns-1を超える低EC条件ではσTDTはゼロを示し,良好な精度でECを決定することができなかった。SMaxと4極センサーで測定したEC値(σ4probe) ダウンロード
27 伊東雄樹、鈴木文也、児玉康夫、登尾浩助 明治大学大学院 熱水土壌消毒による温室効果ガス放出量削減を目的としたバイオチャーの土壌混入が、熱水処理時の地温変化や透水性に影響を及ぼすか検討した。バイオチャー混入土壌における熱水土壌消毒時の熱移動はわずかに妨げられるが、水分移動にはほとんど影響がないことが明らかになった。したがって、バイオチャー混入土壌においても熱水土壌消毒は実施可能だと考えられる。 ダウンロード
28 田川堅太、高橋翔平、永野一輝、長裕幸、北野雅治 鹿児島大学大学院連合農学研究科 地表面から深さ0.6mに地下水面を固定した土壌カラムにおいて,ビートを栽培し,植物体・土層中へのイオンの集積量を調べた。ビートの栽培により,深さ0.05mの付近でイオンの集積が最大となった。トウモロコシとの比較により,Na+ ,Ca2+に対する顕著な除塩効果が認められた。 ダウンロード
29 上村将彰、Ty P. A. Ferré、Markus Tuller、宮本英揮 佐賀大学大学院 粘土の含水比(w)・バルク電気伝導度(σTDT)・間隙比(e)の同時計測法を確立するために,SDI-12型TDTセンサーを用いてwの異なるカオリナイトスラリーのTDT波形を取得・解析し,wと見かけの誘電率(εTDT)およびσTDTとの関係を調べた。wの増加とともにεTDTは曲線的に増加し,逆にσTDTは低下した。εTDTとwとの経験的関係に基づいて算出したeは,εTDTの増加とともに増加した。波形勾配値(SMax)とσTDTとの間にも応答関係が成立する可能性が示唆されたことから,その関係を定式化することが ダウンロード
30 上村将彰、宮本英揮 佐賀大学大学院農学研究科 重粘土SRI 水田の含水比(w)・間隙比(e)の変動を観察するために,TDT センサーを用いて水田土壌の見かけの誘電率(εTDT)を連続測定した。水稲生育初期には,潅水や降雨によらずw とe が漸減し続ける,不可逆的な土壌の乾燥・収縮が確認された。サンプリングエリア内に亀裂が形成されると,εTDT 値は局所的な乾湿によって大きく増減するため,潅水の判断指標としてεTDT 値を用いる場合,埋設場所の違いによるセンサー出力の差異を考慮する必要がある。 ダウンロード
31 服部拓生、西村直正 岐阜大学大学院応用生物科学研究科 今日までに日本全国で63箇所の地域において、農地土壌のカドミウム(Cd)汚染対策が実施された。また銅(Cu)は11箇所の地域で汚染対策が実施されている。本研究では、これらの内でCdとCuの両重金属が採掘されていた鉱山から土壌汚染が生じた地域周辺において、現在における汚染状況と汚染経路について土壌調査を行った。その結果、汚染源と思われる鉱山跡地においてはCd、Cu共に高い値が認められ、可溶性Cd含有量に関しては対策地域周辺やそれ以遠の範囲においても本研究で基準の目安とした0.2mg/kgを超えている地点があ ダウンロード
32 田邉幸大、西村直正 岐阜大学大学院応用生物科学研究科 前報1)では、脱気飽和および毛管飽和処理した不攪乱土試料において、動水勾配の変化に伴う有効応力と間隙水圧の変化によりksがおおよそ低下する結果が得られていた。本研究では別の場所から採取した不攪乱土を用いて同様の実験を行った。その結果、脱気飽和試料ではksの変化はあまり生じず、毛管飽和試料ではksが上昇する前報1)とは異なるksの変動を示した。これは粒径や団粒構造などの土壌特性の違いがksの変動の特性に影響を及ぼしていると推察された。 ダウンロード
33 加藤幸、伊東竜太、溝口勝 弘前大学農学生命科学部  青森県弘前市周辺では2013年の春,極端な少雨傾向となった.ぶどう園(スチューベン)では開花直前にもっとも水分を消費する.そのため,通常,潅水を行うことが少ない樹園地でも灌漑の必要が生じた.これに対し農家からは,潅水の時期やその量について戸惑いの声が聞かれた.本研究では,水田から転作したぶどう園において土壌センサを活用し,開花期前後における灌漑実施時の土壌環境の変化をモニタリングした.この結果をもとに,樹園地における灌漑方法について検討した結果を報告する. ダウンロード
34 鈴木文也、伊東雄樹、児玉康夫、登尾浩助 明治大学大学院農学研究科 熱水土壌消毒時に大量の温室効果ガスが発生することが報告されている。熱水土壌消毒の施行翌日にCO2・N2O・CH4フラックスは最大になり、その後ガスフラックスは徐々に減少した。しかし、熱水土壌消毒開始時から翌日までの経時的なガスフラックスは測定されていない。本研究ではカラム実験で熱水土壌消毒を再現し、熱水土壌消毒開始時から24時間後まで2時間毎にガスフラックスを測定した。土中の地温・水分量などを測定し、熱水土壌消毒時のガス動態について考察した。 ダウンロード
35 佐藤直人、登尾浩助 明治大学農学部農学科 微小重力下における多孔質体中の水分移動のメカニズムを明らかにするため、表面張力の変化が水平浸潤速度に与える影響を評価した。表面張力の低下により毛管力が小さくなるため、浸潤速度が低下することが示された。 ダウンロード
36 土井俊弘、西脇淳子 茨城大学農学研究科 中干しによって乾燥した水田土壌では,乾土効果によるN2O放出量の増大が懸念される.土壌の物理性と降雨は土壌中のガス移動に影響を及ぼす.本研究では灰色低地土を対象とし,乾燥した水田土壌でのCO2,CH4およびN2Oガス挙動に間隙率や降雨強度が与える影響を明らかにすることを目的とした. 室内カラム実験を行い,給水直後のCO2ガスフラックス値の減少および給水後のCH4,N2Oガスの土壌中への吸収を確認した. ダウンロード
37 坂西 研二、芝山 道郎、矢口 直輝 農業環境技術研究所 本調査は全面ビニールマルチのレタス栽培における畝間土壌の移動現象を映像と流出観測で示したものである。ビニールマルチの畝間から雨水が急激に出る様子を捉えた。流出量の観測では当初の設計斜面長より、4倍ほど長くしたため、すぐに貯留桝が満杯になったが、その後の雨水流出の詳細な動きは映像に頼ることとなった。 ダウンロード
38 高橋翔平、木下佳美、長裕幸、御領原雄太、北野雅治 佐賀大学農学部 中国・黄河の中流域に存在する圃場において,ビートの栽培を実施した.観測期間中,体積含水率,バルク電気伝導度ともに高い値を示し,現地では塩類集積が進行していると考えられる.ビートへのイオン集積量を調べた結果,Na+に対する顕著な除塩効果が認められた. ダウンロード
39 岩崎 有美、中村 公人、堀野 治彦、川島 茂人 京都大学大学院農学研究科 石川県手取川扇状地(面積約140 km2)を対象として,不飽和浸透流解析が可能であるHYDRUS-1D及び飽和地下水流動解析を行うMODFLOWを用いて,転作田を含む水田地帯における飽和・不飽和帯での浸透過程を考慮した非定常地下水流動解析を行った.その結果,灌漑期前後の地下水位上昇と低下といった水田灌漑を反映した地下水位の季節変動の傾向が再現された.本計算手法が広域の水田地帯での地下水流動解析への適用可能性を示すことができた. ダウンロード
40 中野恵子、久保寺秀夫、餅田利之、藤本順子、佐野修司 九州沖縄農業研究センター  排水不良化が指摘されている花崗岩風化土圃場において、硬度分布および耕盤の透水性を調べた。下層の硬度は高く、金属円筒による不撹乱試料採取は困難な場合があった。負圧浸入計を用いて原位置での近飽和透水係数を測定したところ、いずれの圃場も設定圧=0cmの場合には、10−4~10‒3 cm/sであったが、測定位置によっては、負圧により測定不能な範囲にまで値が低下する場合があった。この低下の程度は、同じ圧力範囲の水分特性曲線からは判定し難かった。 ダウンロード
41 筒井 亮、清澤 秀樹 三重大学生物資源学部 浸潤方程式についてはこれまで多くの経験式や理論式が提案されてきた.しかし,それらには実測データをもとに同定する必要があるパラメータが含まれ,しかもそれらは土壌の物理性と直接結びつかないものがほとんどである. 本研究ではエントロピー最大法(MEP法)を用いて,土壌状態から容易に得られるパラメータのみを用いた浸潤式の開発・検討を行った. ダウンロード
42 深田耕太郎 島根大学生物資源科学部 排水に伴って大気から土壌に空気が浸入する過程はよく分かっていない。そこで、土壌内での音の反射面の位置に注目し、空気の浸入深さと気相率の関係について調べた。その結果、排水にともない、空気が土壌表層から内部へ浸入し、下方向へ拡大する様子を確認できた。 ダウンロード
43 徳本 家康 、J.L. Heilman、K.J. McInnes、C.L.S. Morgan、R.H. Kamps 鳥取大学 テキサスの中央に位置するカルスト地形では,土壌中に石礫含量の占める割合が高く,土壌保水量の低減や木の根の伸長が抑制される.このような環境生態系の水循環の解明には課題が多く,石礫含量を考慮した土壌水分量の観測や石礫分布による土壌水分量の空間変動性の解明が重要である.本研究では,中性子水分計とガンマー線法を併用して,カルスト地形における土壌水分量の空間変動性の解析を行った. ダウンロード
44 南隼人、下大園直人、島野光隆、登尾浩助 明治大学農学部  水田において異なる水管理がCO2、CH4およびN2Oガスの直接および間接放出量について調査した。その結果、間断灌漑では湛水区に比べてCH4の放出抑制には効果的であったが、N2Oの非常に大きな発生が確認された。間接放出の割合は湛水区で最大となり、水管理によって間接放出量の割合は異なることが示された。 ダウンロード
45 朝田 景、江口定夫 独)農業環境技術研究所 土壌微生物バイオマスは陸上生態系における有機物動態の重要な役割を担う。プロセスベースの土壌炭素(C)・窒素(N)動態予測モデルにおいても、そのCN組成比[(C/N)b]はNの無機化・有機化に関わる重要な入力値である。本研究では、既往研究をもとに、(C/N)bが土壌の種類・特性や土地利用によってどのような影響を受けるのかを調べ、解析結果をモデルに反映した。一例として、黒ボク土の(C/N)bがモデルのデフォルト値10よりも低いことを考慮すると、長期間有機物資材を連用した畑地の土壌有機物プールは大きくなることを ダウンロード
46 鈴木心也、岩瀬広、登尾浩助、溝口勝、小林大樹 東京大学大学院農学生命科学研究科 農地土壌において深度別の放射性セシウム濃度を測定するニーズが高まっている。しかし、現状では現場で土壌採取を行い、持ち帰った後に分析を行うために時間と労力がかかってしまい、非効率的である。そこで、本研究では現場で簡易的に深度別の放射性セシウム濃度が測定可能な機器の開発を行った。開発した測定器は補正を加えることにより、深度別の放射性セシウム濃度を捉えることができた。 ダウンロード
47 山下祐司 筑波大学 茨城県南部の林地から採取された堆積有機質層(O層)を充填したカラム通水実験を行い、コロイドの流出パターンと粒子群の粒径分布を計測した。その結果、ファーストフラッシュ時にコロイド流出量が高まり、その放出速度も速いことが示された。加えて、動的光散乱法による粒径分布測定から、10,30,300 nmおよび2 μmにピークをもつコロイド粒子群の存在が確認された。 ダウンロード
48 山野 泰明、吉田 修一郎、塩沢 昌 東京大学大学院農学生命科学研究科 放射性Csにより汚染された福島県内の未耕起の水田(30m×110m)において、5cm径サンプラーにより長・短辺方向に1~2m間隔で作土を採取し、放射性Csの鉛直分布を測定した。10cm層平均Cs濃度と平均移動深度の変動係数は、それぞれ50%、35%であった。これらの変動には数十センチスケールの微地形による影響が認められたが、数メートルから数十メートルスケールでの濃度の高低傾向は認められず、ほ場内ではランダムに分布しているとみなせた。 ダウンロード
49 篠宮佳樹、小林政広、小野賢二、志知幸治、玉井幸治 独立行政法人森林総合研究所東北支所 福島県郡山市の多田野試験林において出水時に渓流水を通じて流出する懸濁物質(SS)や放射性セシウム(Cs)の動態について調査し、以下の結果を得た。1)放射性Csは大きな出水でより多く流出する、2)単位面積あたりの森林の放射性Cs流出率は小さい、3)出水時の渓流水のSSは有機態成分より無機態成分のほうが多くなる、4)出水時のSSに含まれる放射性Csは水や酸に溶けにくい形態のものが多い。 ダウンロード
50 西脇淳子、浅木直美、小松崎将一、溝口 勝、登尾浩助 茨城大学 農学部 福島第一原子力発電所の事故で汚染された農地での農業再開に向け除染活動が行われる。本研究では、表土剥ぎ取り除染にともなう問題点として土壌肥沃度の低下を念頭に、福島県飯舘村での農業を再生させるため、除染後の水田への稲わらの鋤き込み、または堆肥施用が土壌特性に与える影響と水稲生育の調査を行った。その結果、対象区でリン酸が経時低下し、稲の生育が他の区より若干劣ることが確認された。また、稲わらから土壌へのCs移行はほとんど見られなかった。 ダウンロード
51 横川華枝、溝口勝 東京大学大学院農学生命科学研究科 高濃度の放射能汚染のために全村避難の対象である福島県飯舘村において、NPO法人「ふくしま再生の会」を介して住民、行政、大学・研究機関、専門家、ボランティアが協働して被災地域再生プロジェクトを実施するという協働の構造が存在する。その構造はふくしま再生の会会員がそれぞれのバックグラウンド、人脈や経験、専門知識を活かしながら、プロジェクトを効果的かつ円滑に進めることによって成り立っている。 ダウンロード
52 大澤 和敏、片山 高嗣、辰野 宇大、田野井 慶太朗、溝口 勝 宇都宮大学農学部 福島県飯舘村南部に位置する新田川水系の比曽川を対象として,流域における放射性セシウムの流出量を現地観測によって定量した.2013年6月の一雨における観測の結果,河川水中におけるSS濃度と137Cs濃度の相関は高く,放射性セシウムは懸濁物質に吸着された状態で輸送されていることが分かった.また,SS流出量の総量は3.9Mg(0.15g/m2)であり,137Cs流出量の総量は301MBq(0.012kBq/m2)であった. ダウンロード
53 末継淳、森也寸志 岡山大学大学院環境生命科学研究科 土壌中のイライトやバイオタイト(黒雲母)等の鉱物はセシウム(Cs)を強固に吸着し、表土の除染を困難にするとされる。発表者らは、雲母等に固定されたカリウムを可溶化するカリウム溶解菌を用いて表土中のCsを可溶化させ、可溶化したCsを人工マクロポアで土壌深部へ除去する方法を検討している。本発表では、まず粗大な雲母様粒子にCsが収着するかどうかを確認し、収着したCsの空間分布をSEM-EDX(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型蛍光X線分析)によって明らかにした。 ダウンロード
54 石渡 尚之、溝口 勝 東京大学 2011年3月11日の東日本大震災に伴い福島第一原子力発電所から拡散した放射性物質は主に地表面に存在するといわれる。しかし、草の繁茂、耕転、イノシシ等の獣害によって実際には表土削り取り除染法を適用しがたい農地が多い。そのため実際の農地で使え、特別な試薬が不要で省労力な除染手法の開発が必要である。本研究では福島県飯館村水田の除染を念頭に、除染効果を高めるために土の団粒構造の破壊に着目した代かき除染法開発のための基礎実験を行った。 ダウンロード
55 森 也寸志、稲生栄子、登尾浩助、末継 淳 岡山大学大学院 排水不良地では,表面流発生やクラスト形成,また近年増加傾向にある強雨によって表層土壌が失われる劣化プロセスにさらされる可能性が高い.本研究では,東日本大震災の過程で放射性物質の降下があった排水不良の果樹園において,下方浸透促進技術を使って放射性物質を根群域下に移動させ,廃棄土壌を発生させずに地表における放射線量を減ずることを試みた.カラム実験では放射性物質が下方に移動し,かつ排水からは未検出という初期の知見を得た. ダウンロード
56 水野義之、服部友紀、上坂りさ 京都女子大学大学院現代社会研究科 福島原発事故後の土壌汚染の特徴は、放射性セシウムが広範囲に非一様分布しているため、空間線量率は周辺半径数百メートル全域の放射線影響を考慮しなければならないことである。このため現状では除染効率の改善が容易ではなく、社会的困難に逢着している。そこで本研究では可搬性の高い簡易型ガンマカメラを開発し、γ線の飛来方向を確認しつつ、リモナイト等遮蔽性土壌を組み合わせた環境γ線低減方法を開発したので、その研究成果と実施報告を行う。 ダウンロード
57 吉川 省子、江口 定夫、板橋 直、井倉 将人、大越 聡 農業環境技術研究所 福島原発事故後に、2012年5月から1年間、放射性Cs濃度の高いコメを産出した3水田において、水田の水収支、および水とともに移動する放射性Csの測定により、その水田での放射性Cs流入・流出量の推定を行った。1年間の放射性Csの出入り(但し水稲収穫分は考慮していない)は、水田のCs存在量の0.6%の流出、0.3%の流入、2.3%の流出と計算された。 ダウンロード
58 土壌物理学会 土壌物理学会 学会として地元の方からの土壌除染に関する相談を受け付け、できる範囲内でお答えする。 ダウンロード


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