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学会長挨拶:

学会長

取出 伸夫

三重大学大学院生物資源学研究科
土壌圏循環学研究室

 2021年4⽉より会⻑に就任しました。昨年からの新型コロナ感染症の影響による生活様式の変更は、会員の皆さんの研究にも様々な制限が生じていると思います。私の在任期間中に世の中が落ち着きを取り戻すことを願うばかりですが、会員の皆さんのご協力を得ながら、土壌物理学会の新たな展開に尽力したいと思いますのでよろしくお願いします。 今回、改めて学会のホームページに掲載されている「土壌の物理性」のバックナンバーに目を通しました。創刊号の冒頭では、福田仁志先生が「土壌水分の問題点」と題して不飽和透水係数の重要性と難しさを解説し、続いて田淵俊雄先生が「負圧浸透について」と題して、自らの考えに基づき現象を観察することの大切を熱く語られています。その後も創設者からの伝統が引き継がれ、主に周辺の農学分野の研究者、技術者を取り込みながら、緻密な取り組みを特徴とした土壌物理学が発展してきた歴史が残されています。

 10年後すら予測できないほど社会の変化は大きく、国内外の研究をとりまく環境も、大きく変化し続けています。元来、長期的な視点の取り組みが必要な研究の世界にも、研究費の獲得のために短期間で成果のあがるわかりやすい研究が求められ、様々な社会からの要求が矢継ぎ早に押しかけています。また、デジタル社会におけるビッグデータの活用は、土壌物理の世界も例外ではなく、必然の流れとなっています。この社会で生き残るためには、研究者にもデータ処理能力が強く求められているのでしょう。

 足立前会長の挨拶で引用されている岩田進午氏は、著書「土のはなし」のあとがきで、地球の宝物としての「土」の3つの側面のひとつとして、「科学の宝庫として。土は、未知のものを数知れないほど多く蔵している。」と述べています。この土を対象とする研究は、一歩進めばまた新たな課題が見えてくる、終わりのない山登りと似ています。土壌物理学会の皆さんは、この「土」の持つ深遠な魅力に引かれた方々と思っています。前述の福田仁志先生は、「土という魔園から抜け出そうともせず研究者達は はて しのない難路を一歩一歩とすすんでいくことであろう。」と結ばれています。社会の変化の早さと遅々として進まない研究のギャップに悩まされてきた私にとっては、創刊号から宿命づけられていたことに妙に納得させられ、不思議と元気が出ました。

 前向きに考えれば、この何とも不自由な期間は、立ち止まっていろいろなことを考え直す機会なのでしょう。私は、忙しさを理由に考えることから離れてしまった自分を再認識させられました。頭の運動不足は深刻で、毎日のトレーニングの重要さを痛感させられています。研究のアイデアを求めてじっくりと考えることの大切さは、時代に不変な研究の本質だと思います。なかなかうまくいかないだけに極めてストイックですが、それだけに、成功したときの喜びは大きいのでしょう。土壌物理を専門とする研究者は世界に目を広げても決して多くはありませんが、いつでも、どこでもオンラインで議論の出来る環境は、同じ関心を持つ研究仲間の輪を広げるために大いに役立つと思います。

 「土壌の物理性」は、今年度末に150号を迎えます。50号、100号に続き、特集号を企画していますが、今回は広く会員の皆さんに、これからの土壌物理学の展開について書いて頂くことを計画しています。正解は誰もわからないのですが、今後、土壌物理に関わる周辺分野と協力しながら発展していくために、土壌物理の役割は何か、研究は何を目指すべきか、会員の皆さんのそれぞれの立場から論じて頂きたいと思います。私は、この土壌物理学会が、規模は小さいけれど、誰もが自由に活発に議論できる場として情報を発信していけることを望んでいますが、これには会員の皆さんの協力が不可欠です。 今年度のシンポジウムは、「地表面-大気間の物質・エネルギー動態のモデル化―土壌物理学に求められるもの―」と題して、土壌物理分野で発展してきた緻密な水分・溶質・熱移動モデルとより大きなスケールへのアップスケーリングの課題を議論します。また、来年度は、土中の物質循環に焦点を当てる予定です。いずれも、土壌の物理性の創刊されたころからの永遠のテーマですが、諸先輩の今までの成果を振り返りながら、今の時代ならではの今後の展開を議論できればと思います。 皆さんの積極的な学会活動への参加をお願いします。

歴史:

 土壌物理学会は、土壌物理に関する研究の進歩と普及を図り、農業技術及び環境科学の発展に貢献することを目的として、1958年に土壌物理研究会として発足しました。会員数は約300名と小さな学会ですが、60年の歴史を持っています。1985年に更なる発展を目指して、土壌物理学会と改称し、今日に至っています。
第30期  第29期  第28期  第27期  第26期

活動:

 会員の最新の研究成果を発表する場として、学会誌「土壌の物理性」を、1997年までは毎年2号、それ以降は毎年3号、刊行しています。2021年5月10日現在で146号までになりました。本誌には約半世紀にわたり、我が国の農業そして海外の研究動向を反映した研究成果が収録されています。先人の研究には多くの貴重なヒントがあります。これを広く普及し、研究の進展・深化に寄与することも学会の大切な役割であると考え、143号までの記事を土壌物理学会ホームページに無料で公開しています。
学会では、会誌の発行の他に、毎年1回シンポジウムとポスター発表を行っています。シンポジウムのテーマは会員にとって有益だと考えられる最近の主要な研究トピックから選び、講師には会員、非会員を問わず適任者を選んでいます。また、シンポジウムに参加できなかった会員のために、会誌でシンポジウムの報告記事を掲載しています。

 シンポジウムと同時に、ポスター発表も行っています。情熱に燃える院生から完成の域に達した研究者まで多くの方が発表していますが、特に若い研究者には、発表をする、自分の身近な組織外の専門家の意見を直接聞くことができる絶好の機会となっています。

 また、学会誌「土壌の物理性」に掲載された原著論文の中から特に優秀な論文に土壌物理学会賞(論文賞)を授与しています。さらに、年一回の全国大会ポスターセッションにおいて優秀と認められたポスター発表には土壌物理学会学会賞(ポスター賞)を授与しています。

土壌物理学会会則ダウンロード

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