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学会長挨拶:

学会長

足立 泰久

筑波大学生命環境系
環境コロイド界面工学研究室

 2019年4月より会長に就任しました足立泰久です。本学会の特長、今期の方向性などを記して、挨拶とさせていただきます。本学会の前身の土壌物理研究会は、土壌の物理性に関心を持つ農学分野の研究者によって発足しました。その歴史は、まもなく60年に達します。当初は、土壌物理学、農地工学、かんがい排水学、土壌肥料学、農業機械学等、圃場整備、土地改良に関わる土を対象としておりましたが、その後、土壌汚染など環境問題が重要課題になって、研究対象も圃場の外へと広がりました。農地に限らず、山地、森林、湿地、乾燥地、寒冷地等、地球上至る所で土壌の生成、そこでの化学反応や移動現象を物理学的に考える意味は小さくありません。森は海とつながっているという考えかたもあり、そのような物質循環を考える場合、土壌物理学の考察は、水文、気象、地圏、海洋などにもおよび、地球環境問題とも関係します。土壌の生成は生物活動に依存しますが、例えば微生物の生態学的活動を情報理論や数理科学などを駆使し物理学的に考える方法論が最近急速に進歩しています。こうした研究動向を踏まえ、これからも、多様な研究者が集う開かれた場として、発展を図っていきたいと思います。2年間よろしくお願いします。

 前会長の石黒宗秀氏の挨拶にもあるとおり土壌物理学会は、土壌の物理的現象に関連する科学と技術の研究領域を対象にしています。物理現象は化学性の基礎となり、生物活動とも密接に関連します。生命現象も究極的には物理学に基づいて考察できます。また、温暖化など、地球規模の環境問題が話題になり、その一方で、分子レベルの土壌表面吸着、土壌微生物による分解反応等が起こるナノレベルのサイエンスが盛んにおこなわれています。土壌物理学は、この両者ミクロとマクロをつなぐ等身大のサイエンスとして特に重要で、水・物質・エネルギーの移動・変換・貯留とそれに関連する諸現象を物理的に解明する学問です。そこには、科学として興味深い広大な世界が広がっています。そのような科学を基礎として、農業や環境技術の発展が求められる時代です。土壌物理学を専門とする研究者はもとより、関連する多くの分野の研究者が集う学会運営が必要と考えます。

 かつて、岩田進午氏は著書「土のはなし」のあとがきで、宝ものとしての「土」には3つの側面があることを述べています。その第一は食糧生産の場としてひとは土がなければ生きていけないこと、第二は地球上の絶妙な生態系バランスの展開の基礎を支えるものとして宝もののように大切にしないとすぐ壊れてしまうものであること、そして第三は科学の種を産みだす宝庫として土は無限大の可能性を持っていることです。第一は農業、農学、第ニは環境、第三は科学の発展に対応した土の関わりの重要性を謳ったものでが、言うまでもなくそのいずれもが、相互に関わりあう土の要素です。これらを踏まえ、最近の動向から今後の重要となる視点は2つあると考えられます。一つは、土壌や微生物などの不均一なソフトマターを扱う科学が最近大きく進歩し、持続的な人間と自然の共存を考える上でたいへん重要な存在として認識されはじめている点です。今後は、岩田進午氏の指摘に加え、物理化学や工学的視点をより強化して土を科学的に見ながらその融合展開が重要になると考えられます。もう一つは、第一の問題とも多少関係していますが、日本に中国や東南アジアなど周辺国を中心に海外から、多くの留学生が押し寄せており、学会としてもこうしたグローバルな動向に対応した活動を組織的に考えるときに来ていることを挙げることができます。

 土壌物理学会では、その活動として毎年シンポジウムを実施しています。本年は、10月26日に筑波の農林ホールで「土壌・水環境のサスティナビリティとコロイド界面現象」を実施します。また、シンポジウムに並行し一般会員のポスター発表を募集します。優秀なポスターには学会として審査に基づいてポスター賞を授与します。また、学会で発行する論文集「土壌の物理性」は、1年の猶予期間を経てインターネットに公開(オープンアクセス)されます。現時点においても英語対応は可能ですが、そのコンテンツをより国際化していきたいと思います。会員諸氏のより積極的な参加を期待します。

歴史:

 土壌物理学会は、土壌物理に関する研究の進歩と普及を図り、農業技術及び環境科学の発展に貢献することを目的として、1958年に土壌物理研究会として発足しました。会員数は約300名と小さな学会ですが、60年の歴史を持っています。1985年に更なる発展を目指して、土壌物理学会と改称し、今日に至っています。
第29期  第28期  第27期  第26期

活動:

 会員の最新の研究成果を発表する場として、学会誌「土壌の物理性」を、1997年までは毎年2号、それ以降は毎年3号、刊行しています。2019年4月1日現在で140号までになりました。本誌には約半世紀にわたり、我が国の農業そして海外の研究動向を反映した研究成果が収録されています。先人の研究には多くの貴重なヒントがあります。これを広く普及し、研究の進展・深化に寄与することも学会の大切な役割であると考え、現在、137号までの記事を土壌物理学会ホームページに無料で公開しています。
学会では、会誌の発行の他に、毎年1回シンポジウムとポスター発表を行っています。シンポジウムのテーマは会員にとって有益だと考えられる最近の主要な研究トピックから選び、講師には会員、非会員を問わず適任者を選んでいます。また、シンポジウムに参加できなかった会員のために、会誌でシンポジウムの報告記事を掲載しています。

 シンポジウムと同時に、ポスター発表も行っています。情熱に燃える院生から完成の域に達した研究者まで多くの方が発表していますが、特に若い研究者には、発表をする、自分の身近な組織外の専門家の意見を直接聞くことができる絶好の機会となっています。

 また、学会誌「土壌の物理性」に掲載された原著論文の中から特に優秀な論文に土壌物理学会賞(論文賞)を授与しています。さらに、年一回の全国大会ポスターセッションにおいて優秀と認められたポスター発表には土壌物理学会学会賞(ポスター賞)を授与しています。

土壌物理学会会則ダウンロード

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